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ゆるりんの小話

メタファーの問題(腹式呼吸)


今回は腹式呼吸と言うメタファーについてです。 メタファーとは、比喩の一種でありながら、比喩であることを明示する形式ではないものを指します。 つまり暗喩です。 例えば、”人間は考える葦(あし)である”という文がそうです。 今回問題にしているのは、様々な技術のもっとも重要なところには、 大抵がメタファーに過ぎないという事です。 野球でいう”腰で打つ” 合気道の”呼吸力”等色々ありますが、 その中でも、 音楽、ヨガ、武道等様々な分野で使われている”腹式呼吸”が、 特に目立つ上、具体性を失い、独り歩きしているメタファーなのです。

ボイストレーニングの現場では、腹式呼吸が最高の極意という扱いですが、 この言葉の胡散臭さたるや目を覆いたくなるものです。 解剖学もろくに分かっていない人が、こういった自分でも訳の分からない理論を並べて、 更には人に教えて、ヴォーカルとしての人生を迷わせているのです。 先の例で言えば"人間は考える葦である"という言葉を聞いた人が、 人生について問われた時に、 人間は考える葦だから、 葦を見ればわかるから見ていなさい。と言うようなものなのです。 葦だけでは人の全てを語れません。 それと同じで腹式呼吸だけでは、 ヴォーカルに必要な呼吸を全てまかなえません。

ボイストレーニング

腹式呼吸の一般的な定義としては、 肋骨をなるべく動かさず、 腹周りの筋肉を効率的に使って、 腹に空気が入っていくような”意識、感覚”で呼吸する事。 だと思います。 しかし、こんなものは不完全な呼吸で、 練習用の呼吸でしかありません。 肋骨の動き、肋骨周りの呼吸筋も効率的に使えるに越した事はありません。 腹”にも”空気が入る意識、感覚があるのはいいですけど、 実際には肺に空気が入っているのだから、 肺に入る空気も感じられないならヴォーカルとしては意識や感覚が甘いと思いませんか?

腹式呼吸が良くて、胸式がダメ? そんなことはありません。 両方上手に使えればいいではありませんか。 ただ単にもっと大きく呼吸をしたいなら、 胸式と腹式を合わせる事もできます。 腹は”使っているだけ”であり、実際に腹に空気は入っていません。 実際に空気が入らない腹に空気が入るように意識させるからこそ、 比喩ですらなく、暗喩でしかないのです。 "更に"、肺に空気が入る感覚を否定するから、 窮屈感が出て難しく感じます。 だから腹式呼吸という言葉に神秘性を感じるのです。

そして腹式呼吸が非常に高度な技術で、 体得するのに何年もかかる。というイメージが独り歩きして、 本質を見失っている人が多いのです。 とある呼吸の練習があり、それを教える人が「これは腹式呼吸だ」とメタファー(暗喩)を使って言い、 それが伝わりヴォーカルの世界でも使うようになってしまい、 「ヴォーカルの極意は腹式呼吸だ」となっています。 声楽、ロック、メタル等は全て発声方法も呼吸法も違うはずです。 声楽の呼吸法と腹式呼吸はイコールではありません。

腹式呼吸はあくまでもトレーニング法であって、 ベストの呼吸法ではないのです。 では、呼吸についてヴォーカリストとしてどういった基礎練習をすればよいか? 胸式も腹式も自在に使えるようにすればよいのです。 更に、胸周りも、腹周りも鍛えればいいし、 胸周りも、腹周りもゆるんだ状態になれればいいのです。 (ちなみにゆるむは力をほぼ完全に抜ける上に、100%により近く力を使える状態。 この注釈が無ければこれもただのメタファーになりうる。)

総括すると、腹式呼吸が一番良い呼吸ではなく、 あくまでもトレーニング法の一つで、 腹を効かせられれば良いのです。 メタファー(暗喩)が悪いのではなく、 ただの暗喩だと理解せずに、 そこに神秘性をまとわせ、極意にしていく事が悪いのです。


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過去にブログで書いたそこそこ重要な内容の記事を取り出して紹介します。

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